モデルの前段に検索を置いた瞬間、ナレッジベース内のすべてのドキュメントは実行可能な入力になる。シェルの意味での実行可能ではない。Confluenceページに置かれた一段落がエージェントの挙動を変えうるという意味での実行可能だ。検索がそれを取得し、コンテキストウィンドウに貼り付け、モデルはシステムプロンプトと同じ注意力でそれを読むからだ。多くのチームはユーザーの入力欄については丹念に脅威モデリングを行いながら、6つのシステムから4万ページを取り込む際に誰が書き込めるのかを確認していない。

これは間接的プロンプトインジェクションであり、直接型とは異なる問題だ。直接型インジェクションでは攻撃者がアプリに直接語りかける必要がある。間接型では攻撃者はドキュメントを書いて待つだけで、あとは自社のパイプラインがペイロードを配信してくれる。攻撃者はエンドポイントに一切触れない。検索機構そのものが配信手段になる。

誰がナレッジベースに書き込めるのか

まずここから始めるべきだ。この問いが他のすべての見方を変えるからだ。ベクトルストアに流れ込むすべてのソースを列挙し、誰がそこにテキストを投入できるかを確認しよう。

  • サポートチケット。サポート用メールアドレスを知っている全員。
  • 公開ドキュメントサイト。そのリポジトリにマージできる人全員と、そこで動くCMSプラグイン。
  • ConfluenceやSharePoint。全従業員、全契約社員、サービスアカウントを持つすべての連携システム。
  • スクレイピングしたWebページ。インターネット全体。
  • アップロードされたPDF。ファイルを添付できる人全員。多くのB2B製品では顧客がこれに該当する。

典型的なRAG導入では、これらの集合の和集合はアシスタントの利用を許可された人々の集合よりもはるかに大きい。この非対称性こそが脆弱性だ。1つのwikiページを編集できる契約社員が経営陣への回答に影響を与えることができ、PDFを添付できる顧客がサポートチームへの回答に影響を与えることができる。

ペイロードはどう見えるか

それはエクスプロイトのようには見えない。それこそがポイントだ。汚染されたチャンクはただの文章に見える。

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正当な3つのチャンクと一緒に検索されると、モデルにとってこれはもう1つの権威ある社内ドキュメントのように読める。構造的にはまさにそうだからだ。運用者がモデルに信頼するよう指示したナレッジベースから出てきたものなのだ。コンテンツフィルターは何も検知しない。有害性もPIIも禁止トピックも存在しない。この論点はBedrock Guardrails Won't Save You From Prompt Injectionで詳しく論じたが、RAGはそれが最も痛烈に効いてくる場面だ。注入されたテキストが自社のバッジを身につけてやってくるからだ。

さらに悪いことに、この攻撃は永続的だ。直接型インジェクションは1回のやり取りで終わる。汚染されたチャンクはインデックスに居座り、検索機構がそれを上位にランクづけするたびに、誰かが気づくまですべてのユーザーに対して発火し続ける。

推論時ではなく取り込み時にスキャンする

直感的には、検索されたチャンクがプロンプトに入る直前にフィルタリングしたくなる。やりたければやればいいが、主たる対策としては2つの理由で誤りだ。まずクエリのたびに実行されるため、レイテンシとトークンのコストを永久に払い続けることになる。さらに、文脈が最も乏しい時点で実行される。孤立したチャンク単体を見ても、それが以前からあったのか先週火曜日に現れたのかは分からない。

経済合理性が成り立つのは取り込み時だ。ドキュメントを1度だけスキャンすればよく、500トークンの断片ではなくドキュメント全体を手にしており、その出所も分かっている。具体的には次の通りだ。

1. 埋め込み前にドキュメントを分類する

候補となるすべてのドキュメントに対し、モデルに向けた命令文がないかをチェックする。以前の文脈を無視させる指示、ツールや関数名への言及、埋め込まれたロールマーカー、取得や送信を指示するURLとの組み合わせなどだ。この用途には小型モデルで十分であり、クエリごとではなくドキュメントごとに1度実行すればよい。削除ではなく隔離とし、人間をレビューキューに配置する。

2. 見えないレイヤーを取り除く

インジェクションは人間が目にしない部分を好む。白背景に白文字、ゼロ幅文字、HTMLコメント、PDFのメタデータフィールド、alt属性、使用範囲外のスプレッドシートセルなどだ。抽出処理はそのすべてを拾い上げるが、レビュー担当者はそのどれも目にしない。取り込み時に積極的に正規化すること。プレーンテキストに平坦化し、コメントを除去し、ゼロ幅文字と双方向制御文字を取り除き、抽出されたテキストが画面表示と大きく乖離するドキュメントは拒否する。

3. 出所情報をインデックスとプロンプトの両方に持ち込む

すべてのチャンクにソースシステム、著者またはアップロード者、取り込みタイムスタンプのメタデータを保持させるべきだ。これにより3つのことが得られる。1つ目はフィルタリングされた検索で、顧客向けアシスタントが顧客のアップロードしたコンテンツを権威あるものとしてランクづけすることがなくなる。2つ目は実効性のあるインシデント対応で、汚染されたチャンクを1つ見つければ、同じアップロード者による同じ期間のすべてのチャンクを問い合わせられる。3つ目は、このブロックが運用者ではなく信頼できないアップロード者由来であることをモデルに伝えられるプロンプトだ。

ソースを階層化し、混ぜ合わせない

多くのRAG設計はベクトルストアを1つのフラットな真実のプールとして扱う。これはモデリング上の誤りだ。ソースには異なる信頼レベルがあり、分離しておくべきだ。

実用的な分け方は3階層だ。公開前に責任者が明示的にレビューするキュレーション済みコンテンツ、認証済み従業員が書き込める社内コンテンツ、そして顧客や公開Webが生成したあらゆるものを指す信頼できないコンテンツ。そして階層を権限に紐づける。信頼できない階層から検索するターンには読み取り専用ツールのみを与え、副作用を引き起こす能力は与えない。メールを送信したり記録システムに書き込んだりできるターンは、キュレーション済み階層からのみ検索させる。制約的に聞こえるかもしれないが、これが実際に意味することに注目してほしい。汚染されたドキュメントの被害範囲は、それを検索したターンが利用できるツールセットそのものに一致する。この2つを整合させておくことがすべての対策だ。

正直なところ、コストはどれくらいか

取り込み時のスキャンは無料ではない。パイプラインに分類パスを追加することになり、大規模なコーパスでは実際のコストがかかり、更新頻度の高いコーパスでは実際のレイテンシがかかる。また、正当なドキュメントを誰も志願して担当していないレビューキューに送ってしまう誤検知も受け入れることになる。階層化はさらにコストがかかる。分離されたインデックス、信頼レベルを考慮した検索ロジック、ターンごとに変わるツール配線が必要になる。

ここでのトレードオフは、書き込み時の固定コストと、読み取り時の無制限のコストを天秤にかけることだ。取り込みをすり抜けた汚染チャンクは、インデックスに残り続ける限り、それをたまたま上位にランクづけするすべてのユーザーから問い合わせられ続ける。この非対称性こそが、取り込み時こそコストを投じるべき場所である理由だ。

結論

RAGはドキュメントストアを、モデルの資格情報が紐づいた入力チャネルへとひそかに変えてしまう。そしてそのストアに書き込める人々の集合は、アシスタントの利用を許可された人々の集合よりもほぼ常に大きい。クエリ時のフィルタリングは、最もコストの高いタイミングで症状に対処するにすぎない。取り込み時にスキャンし、見えないレイヤーを正規化して取り除き、すべてのチャンクに出所情報を保持させ、信頼できない階層が何かを実行するツールに絶対に到達できないようソースを階層化しよう。モデルは検索して渡されたものを常に信頼する。何を検索させるかを決めるのはあなただ。

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この問題のインフラ側、つまりパイプラインに流れ込むバケットやリポジトリへの書き込み権限を締める話は、ercan.cloudのフィールドノートにまとめてある。ハブはercanermis.comだ。